秋吉理香子「サイレンス」-しまたまさんとは誰なのか?

秋吉理香子さんの『サイレンス』読みました。
今のところどれを読んでもハズレがない秋吉さんです。
(読んだ本は「暗黒女子」「聖母」「自殺予定日」「絶対正義」「機長、事件です! 空飛ぶ探偵の謎解きフライト」「婚活中毒」)

新潟本土の港からフェリーで約二時間、人口は三百人以下で信号機もない雪之島で生まれ育った深雪。
アイドルを目指して故郷を離れたが、いまは夢をあきらめて東京の芸能プロダクションでマネージャーをしている。
両親に結婚の挨拶をするために実家へ帰省したが、婚約者の俊亜貴は突然失踪……。
「しまたまさん」に護られた島から、深雪たちは東京へ戻って結婚できるのか――。

私もそこそこ田舎の島の出身です。
人口は当時1万人ちょっと。
島に信号もコンビニもない、遊ぶところといえば海ぐらいのものでした。

だから、島の人たちが都会にあこがれるのはよくわかります。
島に残る決断をするのもわかります。

島の物語を読むと、少し思い入れが違ってきますね。

この物語の主人公・深雪の不幸なところは、美人で歌が上手だったことでしょう。
アイドル募集のオーディションで新潟代表に選ばれてしまう。
そして東京での本選を是非にと望まれるのだけど、両親に大反対され許してもらえなかった。

そのことを、ずっと、30歳を過ぎても引きずっています。

大学生になって東京に出たけど、それでは遅すぎた。
アイドルとしての旬は終わってしまってた。

しばらくアイドルを目指していたけど、結局は諦め、でも離れることもできなくて、マネージャーという仕事を選ぶ。
それでもまだ、親のせいだと思ってる。

悲しくなります。

ただ、マネージャーとしては有能で、彼氏もできた。
仕事が忙しいにもかかわらず、彼のために食事を作り世話をやく。
二人で東京でお正月を迎える時には、おせち料理まで手作りだ。
そんな独身女性がいるのか、しかも東京に。

煮え切らない彼に迫り、やっと親に会うことを了承させ、二人で島に挨拶へ。

島の事、田舎の風習など何もわからない彼を連れて、超がつくほどのド田舎への帰省。
迎えるのは、嵐のような雪と雷。
そして、深雪を大切に思う幼馴染みや同級生たち。

しまたま(島霊)さんとは何なのか、誰なのか?
しまたまさんを信じて疑わない、島のお年寄りや子どもたち。

子どもが素直に、お姉ちゃんを帰さないで、と、しまたまさんにお願いしたからというシーンは恐怖です。
素直に帰らないでほしいと願ってるだけなのだけど、止まない雪に恐怖を感じてしまう。
一部ホラーのようでした。

深雪の友人の朋子が俊亜貴のスーツを確認して、顔をこわばらせて納得する。
「深雪は幸せになれるよ、きっと」
「どうしてそう思うの?」
「決まってるじゃない。しまたまさんが、護ってくれてるからよ」

雪室で氷のなかに俊亜貴のスマートフォンを発見する深雪。

俊亜貴が着ていたスーツは、いったい誰のものだったのか。
なぜ一真は何十年も放置していた実家の穴掘り式の雪室を、突然埋めることにしたのか。
そして達也と初めて口づけた日、荷台の雪の中には何があったのか。
助手席の足元にあったショベルは何に使われたのか。

色々なことに気づいた深雪だったけど、何も知らないように、結婚して子供を産んで、幸せになる。

そして義妹の彼氏を『冬』に連れてくればいいと勧める。
お義母さんと一緒になって。
「しまたまさんが、しっかり見極めてくれますから」と。

義母の口元にもうっすらと微笑が浮かぶ。

もしかしたら、島の男たちは代々大切な女たちを守り、
女たちは、守られてきたのかもしれない。

ちょっと恐ろしいことだけど、それで幸せになれるなら。
島の人たちは、それが幸せなのだろう。

結局、言葉にして語っていないところがすごく好きです。
考えれば考えるほど、そうとしか思えないし、だんだんと恐怖がわいてくる。
でも、どこまでも閉ざされた田舎で平和なんです。

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