明日香村にある犬養孝揮毫の万葉歌碑15

明日香村にある犬養孝揮毫の万葉歌碑15

明日香村には、飛鳥川沿いや周遊歩道沿い、史跡区域内などに合わせて36基の万葉歌碑が建てられています。
そのうちの15基が犬養孝揮毫の万葉歌碑です。

揮毫(きごう)とは?

揮はふるう。
毫は筆。
揮毫とは、文字や書画を書くこと。
特に、知名人が頼まれて書をかくことをいいます。
つまり、明日香村にある、15の万葉歌碑は犬養孝氏の手によるものということです。

犬養孝(いぬかい・たかし)氏とはどういう人なのか?

犬養氏は、万葉集に登場する万葉故地をすべて訪れ、万葉集研究に生涯をささげ「万葉風土学」を確立されました。
万葉歌に旋律をつけて朗唱する「犬養節」は独自の歌い方で、多くの万葉ファンに親しまれました。

万葉の景観をまもるため、万葉故地が乱開発される現状に抗議し、日本全国の万葉故地に所縁の万葉歌を揮毫した「万葉歌碑」を建立、故地をまもる活動に奔走されました。明日香村でも古都保存に尽力し、明日香村名誉村民となられています。

2000年には、犬養氏を顕彰し関係資料を展示する「犬養万葉記念館」ができました。

犬養孝揮毫の万葉歌碑

それでは、具体的にどんな歌碑があるのでしょうか。

采女の 袖吹き返す 明日香風 都を遠み いたづらに吹く

うねめの そでふきかへす あすかかぜ みやこをとほみ いたづらにふく
万葉集:巻1-51
作者:志貴皇子(しきのみこ)
場所:奈良県高市郡明日香村豊浦(甘樫丘中腹)
訳:采女の袖を吹き返した明日香風は、都が遠くなったので、ただ空しく吹いている。

今日もかも 明日香の川の 夕さらず 河蝦鳴く瀬の 清けくあるらむ

けふもかも あすかのかはの ゆふさらず かはづなくせの さやけくあるらむ
万葉集:巻3-356
作者:上古麻呂(かみのこまろ)
場所:奈良県高市郡明日香村飛鳥(甘樫橋東詰の道路沿い・あすか楽市前)
訳:今日もまた明日香川では、夕方になるといつもカエルの鳴く瀬がすがすがしいことだ。

大君は 神にしませば 天雲の 雷の上に 廬りせるかも

おほきみは かみにしませば あまくもの いかづちのうへに いほりせるかも
万葉集:巻3-235
作者:柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)
場所:奈良県高市郡明日香村雷(道路沿い)
訳:大君は神でいらっしゃるので、天雲のかかっている雷丘に仮宮を造っていらっしゃる。

大君は 神にしませば 赤駒の はらばふ田居を 都となしつ

おほきみは かみにしませば あかごまの はらばふたゐを みやことなしつ
万葉集:巻19-4260
作者:大伴御行(おおとものみゆき)
場所:奈良県高市郡明日香村飛鳥(飛鳥坐神社 境内に「筆塚」あり)
訳:大君は神でいらっしゃるので、赤駒が腹這う田を立派な都となさった。

わが里に 大雪降れり 大原の 古りにし里に 降らまくは後・わが岡の おかみにいひて 降らしめし 雪の摧けし そこに散りけむ

場所:奈良県高市郡明日香村小原(大原神社)

わがさとに おほゆきふれり おほはらの ふりにしさとに ふらまくはのち
万葉集:巻2-103
作者:天武天皇(てんむてんのう)
訳:わたしの里に大雪が降ったよ。あなたのいる大原の古里に降るのはもっと後のことでしょう。

わがをかの おかみにいひて ふらしめし ゆきのくだけし そこにちりけむ
万葉集:巻2-104
作者:藤原夫人
訳:わたしのいる岡の水の神様に言いつけて、降らせた雪の砕けたとばっちりが、そこに散ったのでしょう。

大口の 真神の原に 降る雪は いたくな降りそ 家もあらなくに

おほくちの まかみのはらに ふるゆきは いたくなふりそ いへもあらなくに
万葉集:巻8-1636
作者:舎人娘子(とねりのおとめ)
場所:奈良県高市郡明日香村岡(奈良県立万葉文化館敷地内 明日香夢(あすかむ)展望台)
訳:(大口の)真神の原に降る雪は、ひどく降らないでほしい。その辺りに家もないので。

山吹の 立ちよそいたる 山清水 汲みに行かめど 道の知らなく

やまぶきの たちよそひたる やましみづ くみにゆかめど みちのしらなく
万葉集:巻2-158
作者:高市皇子(たけちのみこ)
場所:奈良県高市郡明日香村岡1150
(犬養万葉記念館「万葉は青春のいのち」「あすか風」の歌碑あり)
訳:山吹が咲いている山の清水を汲みに行きたいが、そこへ行く道が分からない。

世間の 繁き仮廬に 住み住みて 至らむ国の たづき知らずも

よのなかの しげきかりほに すみすみて いたらむくにの たづきしらずも
万葉集:巻16-3850
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村(川原寺前)
訳:世の中という煩わしいことが多い仮の住みかに住み続け、死後に行き着く浄土の様子はわからない。

明日香川 瀬々の玉藻の うちなびき 情は妹に 寄りにけるかも

あすかがは せぜのたまもの うちなびき こころはいもに よりにけるかも
万葉集:巻13-3267
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村岡(飛鳥周遊歩道 南都銀行明日香支店付近の飛鳥川沿い)
訳:明日香川の瀬々の玉藻がうちなびくように、心はあおの娘になびき寄ってしまった。

嶋の宮 上の池なる 放ち鳥 荒びな行きそ 君いまさずとも

しまのみや うへのいけなる はなちとり あらびなゆきそ きみまさずとも
万葉集:巻2-172
作者:草壁皇子(くさかべのみこ)の宮の舎人(とねり)
場所:奈良県高市郡明日香村岡
(飛鳥周遊歩道 岡寺から石舞台古墳方面へすぐ)
訳:嶋の宮の上の池にいる放ち鳥よ、心すさぶな、皇子はいらっしゃらなくても。

明日香川 七瀬の淀に 住む鳥も 心あれこそ 波立てざらめ

あすかがは ななせのよどに すむとりも こころあれこそ なみたてざらめ
万葉集:巻7-1366
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村祝戸(飛鳥稲淵宮殿跡)
訳:明日香川の多くの瀬ごとにできた淀みに住んでいる鳥も、深く思うがゆえに波を立てないのであろう。

御食向かふ 南淵山の 巌には 降りしはだれか 消え残りたる

みけむかふ みなぶちやまの いはほには ふりしはだれか きえのこりたる
万葉集:巻9-1709
作者:柿本人麻呂歌集(かきのもとのひとまろかしゅう)
場所:奈良県高市郡明日香村阪田(坂田寺跡)
訳:(御食向かふ)南淵山の巌には、降った薄雪が消え残っている。

明日香川 明日も渡らむ 石橋の 遠き心は 思ほえぬかも

あすかがは あすもわたらむ いしはしの とほきこころは おもほえぬかも
万葉集:巻11-2701
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村稲渕(飛石付近の石橋)
訳:明日香川を明日も渡ろう。石橋の遠い先まで見通すことなど思いもよらないことだ。

立ちて思ひ 居てもそ念ふ くれなゐの 赤裳裾引き 去にし姿を

たちておもひ ゐてもぞおもふ くれなゐの あかもすそびき いにしすがたを
万葉集:巻11-2550
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村平田(高松塚古墳前の小丘)
訳:立っては思い座っても思う、紅の赤裳の裾を引いて去っていったあの人の姿を。

さ檜隈 檜隈川の瀬を速み 君が手取らば 言寄せむかも

さひのくま ひのくまがはの せをはやみ きみがてとらば ことよせむかも
万葉集:巻7-1109
作者:未詳
場所:奈良県高市郡明日香村下平田(飛鳥周遊歩道 下平田休憩園地)
訳:檜隈川の瀬がいので、あなたの手を取ったなら噂されるでしょうか。

まとめ

これらは、犬養孝氏の揮毫の万葉歌碑で15基あります。

この他にも全部で36基の万葉歌碑があるということなので、少しずつ見てまわりたいです。

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