ドラマ『ブラックペアン』の監修ドクターに片っ端から教えてもらう

Doramaブラックペアン, 医療監修

医療ドラマは大好きでよく見るのですが、それが実際の医療の現場と比べてどうなのか?など、考えたことはありませんでした。
ドラマ『ブラックペアン』の原作者さんの海堂尊さんは実際のお医者さまなので、現場の実情が語られていると思って本は読んでいましたが、実際はどうなのか、初めて興味を持ちました。

それというのも、ドラマ『ブラックペアン』の公式サイトで医療監修ドクターの解説ページを見つけたからです。
その名も【片っ端から、教えてやるよ。】
とても興味深いので、抜粋してみたいと思います。

医療監修ドクター・山岸俊介先生のプロフィール

イムス東京葛飾総合病院
心臓血管外科
医長

日本外科学会外科専門医
日本心臓血管外科学会専門医

2006年慶應義塾大学医学部卒業。
仙台厚生病院、埼玉医大国際医療センター、イムス葛飾ハートセンターを経て、現在イムス東京葛飾総合病院心臓血管外科医長。

“医療監修”とは?

現実の心臓外科医はどんな人たちか

心臓外科医でも色んな人がいて、
さまざまな考え方や性格を持ち、
葛藤し、
嫉妬し、
妬み、
お互いの足を引っ張り合い、
保身に走り、
日々愚直に努力を惜しまず、
格好つけて、
自分を誇示して生きています。

実際に『ブラックペアン』の脚本に登場するエピソードはリアルにあり得る話ばかりで、渡海、世良、高階、佐伯など、同じような心臓外科医は実在しています。

手術シーンのリアリティ

手術室の器具の配置、
器械台の道具の配置、
術野からの出血の仕方、
術野のドレープに着く血液の付着具合、
役者の方々のガウン(手術着)に着く血液の様子、
全て実際の現場を再現しています。

役者さん方にはいろいろな所作を練習してもらいました。
ガウン(手術着)を着る、着せる。
糸結び。
縫合。
器械出し。
現場でも通用するのではないかと正直驚いています。

二宮さんをはじめ皆さん非常に器用で、複雑な動きでも1回教えるとリハーサルの段階でほぼほぼ仕上がって、本番ではもう一流の心臓外科チームの所作となっているのには正直驚きました。
自分が10年以上かかって習得したテクニックを数分で超えられてしまう、ある意味屈辱的な瞬間が数多くあり、一流の役者さんたちは本当にすごいと逆に学ばせてもらっています。

タイトルにもなっている“ペアン”とはどのような器具?

ペアンは比較的挟む力が強い組織やチューブ、布などを挟んで止めておく道具です。
ハサミのような形をしていて、先端が曲がっている曲がりペアンと、まっすぐな直ペアンがあります。

ドラマの中で登場する“ブラックペアン”は佐伯教授が手術の仕上げに使う特製もの。
佐伯教授がブラックペアンを使う=手術成功を意味する。

“インパクトファクター”とは?

医師たちは一流になるために、“ある数値”を必死に取り合うのです。
それが医師としての価値を決めるとも言われる指標=“インパクトファクター”。

学術誌の重要性や影響度を数値化した指標の一つで、
学術誌に論文が載り、
その論文が引用された回数
から求められます。

ドラマの中で、理事長選挙を争う佐伯教授と西崎教授は、あの手この手を使ってより高い数値の“インパクトファクター”の獲得を目指していくのです。

治験コーディネーターとは

治験コーディネーターとは、治験責任医師又は治験分担医師の指導の下に治験に係る業務に協力する薬剤師、看護師その他の医療関係者の方です。
医療機関や製薬会社などの医療関係の企業と契約して働く方から、フリーで様々な場所で働く方まで、幅広い活躍をしています。

仕事内容は
治験開始の準備、
被験者対応、
検査データの収集および整理、
医師への報告、
など。

新薬や新しい医療機器などの導入に向け、未来の医療のため、患者さんに寄り添い、大変重要な役割を果たしています。

1話の医学的解説

佐伯式の凄さ

人工心肺を使い、心臓を止めて手術をするのが一般的ですが、

佐伯式は、心臓を止めずに心臓が動いたまま僧帽弁を修理する手術です。
心臓の弁や、心臓の筋肉は非常にデリケートですので、動いている状態で修復するのは非常に難しいです。
少しでも針先が狂えば組織が裂けていき、取り返しがつかないことになります。

それを天才佐伯教授は100分の1mmのくるいもなく完遂してしまう。
まさに神業です。

横山の失敗(急性大動脈解離の手術)と渡海の凄さ

モニターを見て佐伯教授が
「上行大動脈に裂け目があるな。横山、上行置換しておけ」
と指示を出します。

これは的確な指示で、
上行大動脈に裂け目がある場合は上行大動脈を人工血管に取り替える手術をしなければなりません。

ただ、基部の内側に裂け目がないか、入り込んでいってないかを確認しなければならないのです。

もし基部に裂け目を残したままにすると、そこからどんどん血液が基部の血管の壁に入っていって、ひどい場合は破裂してしまいます。
心臓外科医として当たり前のことを教授の指示を鵜呑みにした横山は怠ってしまったのです。

渡海は冷静に
「はい、基部の再建するよ〜遮断鉗子」
と言ってあっさりと基部の再建を行います(基部再建は結構大変な手術です)。

あまりの手技の早さに助手2人も圧倒され、全く手が出ていません。

通常であれば、手術は執刀医がいて、第一助手がいて、第二助手がいて、皆で協力して手術を行うのですが、渡海は一人ですべてできてしまいます。
助手を必要としないほど能力が長けているのです。

できないやつは下手に触るんじゃねーということの現れです。

すべての責任は執刀医にある。
渡海は外科医として非常に当たり前の事を身をもって体現しているのです。

渡海の判断力

優秀な外科医は手術のテクニックだけでなく、判断力も非常に優れています。
目の前の患者さんを救うための最短距離を一瞬で割り出して的確な処置を遂行できるのです。

急性大動脈解離の手術の後に、まだ僧帽弁逆流が残っている宮崎さんの処置を、
心臓を止めて行うのか、
心臓を動かしたまま行うのか、
それともそのまま様子を見て後日処置を行うのか。

患者さんの心臓の状況、全身状態はどうなのかを総合的に即座に判断して、心臓を動かしたまま処置を行う(佐伯式)ことを選択します。

その場でやったことのない佐伯式を自分自身が出来るという確証と自信があり、見事にやりきってしまう。まさに一流です。

自己心膜による大動脈弁形成術

一般的に、患者さんの右側に執刀医が立ち、左側に第一助手が立ちます。

主に手術を行うのは右側の関川なのですが、左側の渡海が手術を進めています。

手術の方針も渡海が決めて、
「自己心膜による大動脈弁形成術を行う」
「人工弁いらない」
と指示を出します。

この自己心膜による大動脈弁形成術は東邦大学大橋病院心臓外科の尾崎教授が考案した手術で、まだ世界にもできる人は一握りの手術です。
それを思いついたかのようにさらっとやってしまう渡海はやはり只者ではありません。
しかも助手の位置から。

あの数分のシーンを見ただけで、間違いなく世界中の心臓外科医は羨望の眼差し。
渡海の「自分の組織だけで治せるのにわざわざ人工弁なんて異物ぶち込む必要ない。」名言です。

準備の大切さ(脾動脈瘤切迫破裂)

「素人のお前にはわからないかもしれないが、高階、あいつは準備を怠った」。

渡海の言う準備とは何か。

それは術前の患者さんの術前検査を全部洗いざらい見て手術の方針を決めるという当然のこと以上に、その手術に臨むに当たり、医者になってから、いや生まれてからどれだけ努力してきたかまで含んでいる深い準備であると考えられます。
少なくとも僕が見る限り、渡海はそこまでの準備をしてきた。
でなかったら手術場でのあの自信は出てこない。

「どうして出血なんて。手術は完璧だったはずだ」
という高階に渡海は
「心臓はな。お前それ以外見てなかっただろ」。

「最新の弁を入れると一気に血の巡りが良くなって他のところに支障が出ることぐらい分かるだろ」
とは僧帽弁閉鎖不全症に最新の弁が入ることで僧帽弁の逆流が制御されて、全身に回る血液量(フォアードフロー、アウトプット)が増加して脾動脈瘤にかかる血圧が上昇して破裂したということです。

こんなことあるのかの裏付けに渡海はさらに
「あの症例に(スナイプ論文に)今回と近い死亡例があった」
と言い準備不足をどんどん攻め立てます。

実際の心臓手術以上の現場

現場では最初は

ガウンを着るところ、
手袋をつけるところ、
手術の器械を渡すところ、
受け取るところ、
組織を縫っているところの所作、
姿勢、
糸結び、
手水のかけ方、
助手の動き方、
サクション(吸引)の位置、
ここは清潔、
ここは不潔、

すべて1から始めて、
1話の仕上がりは本当に1流の心臓外科チームになっていました。

1話はかなりマニアックで、本当に第一線の心臓外科医にしかわからないような内容がかなり多くなっていました。

治験とは?

開発中の新しい医薬品や医療機器を、患者や健康な人に使用してもらい、データを収集して有効性(効果)や安全性を確認する試験で、この「新薬開発、新医療機器開発」の為の「治療を兼ねた試験」を治験と言います。
人数や被験者の条件を変えて綿密な試験が行われ、この結果が厚生労働省で審査され、安全でかつ効果があると判断されたものが販売、使用を承認されます。

“スナイプ”って?

スナイプとは

スナイプとは正式にいうと経心尖アプローチ(カテーテル)僧帽弁置換術となります。

高階先生のおっしゃっていたように人工心肺を使用しませんし、左胸部に約4cmの切開ですみます。
先端にマイクロセンサーを内蔵しており、僧帽弁に全く狂いなく到達し、最新の弁に僧帽弁を取り替えることができます。
透視画像(レントゲン画像)でスナイプから最新の弁が出る映像が出ておりましたが、あのジャングルジムのようなステントの中に最新の弁が入っていることとなります。
心尖部から抜くときは、先端に止血デバイスがついており、出血を防ぐことも可能です。

スナイプは実在するの?

大動脈弁に関しては、大動脈弁置換術をすでにカテーテルにより治療が行われるようになってきました。
(日本でも行われており、一定の基準を満たした患者さんに可能です)

スナイプ(のような治療器具)に関していうとまだ日本では行われておりませんし、世界でもまだ臨床試験レベルです。
ただこのスナイプ(のような治療器具)の開発に世界で数十の医療機器メーカーがしのぎを削っているのが現状で、いつの日かは日本の患者さんにも使用できる日が来るかもしれません。
その先の未来には大腿静脈といって足の付け根の静脈から僧帽弁を置換したり完璧に修理したりできる時代が来るかもしれません。
今世界の僧帽弁治療はそこに向かって進んでいます。

おわりに

さすがに難しい話が飛び交っています。
あまりに専門的なことはパスしてしまいましたが、このドラマはほぼ現在の医療現場を再現しているといえるのではないでしょうか。
渡海先生の素晴らしさを今後も見守っていきたいです。

解説はまだまだ続きますので、こうご期待。



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